BARE A POP OPERA 

久しぶりに頭をがつんとやられたような気がした。RENT以来、あまり精神的にぐっとくるミュージカルは実は出会ってなかったから…。テーマは恋愛、ドラッグ、ホモセクシャルなどRENTとかぶる部分が多いが、でもこれはRENTとは全く違う。

曲はかなりロックテイストが強くRENTよりもずっとハードであり、更にソウルフルである。それであって、宗教曲風アレンジ、フルートなどの美しい旋律が所々でアクセントとして効いており、心を打つメロディを奏でている。これが26才の作曲家の作品とは脱帽…。

17才で間もなく卒業を控えているカトリックボーディングスクールの学生達の話である。彼らは、自分達は今どこにいて、これから何処に行き、自分自身は一体誰なのかを問いつづけている。
学校中の人気者でルームメイトのJasonと付き合っている優等生でシャイで何かとちょっとダサめのPeterは自分がゲイであることや、Jasonを愛していることを家族や周りの人々に告白し、自分の居場所を見つけたいと日ごろから思っている。しかし、Jasonはそれを皆に知られたくない、ある日そのことをJasonに話してから二人の関係に小さなひびが入った。学内でロミオとジュリエットを演じることになり、JasonとIvyが主役として抜擢され、IvyはJasonに近付こうとする。
バケーションに入る前日、JasonはまだPeterとぎくしゃくしていた。Peterは母の下に帰省したが、Jasonはその日家に帰らず、Ivyと夜を過ごしてしまう…。その後、友人のMattに彼らの秘密を知られてしまったPeterは母親にカミングアウトしようとするが、激しく拒絶され行き場を失ってしまう。更にその後二人を次々と襲う悲劇…。Ivyは望まない妊娠をし、Mattにより二人の関係を暴露されてしまい、更に追い詰められる。そしてその中で二人はお互いに愛していることを再認識するが…。

ちょっと不器用に、そしてひたすらひたむきに純粋にJasonを愛しつづけるPeter。初めはちょっとあまりに繊細すぎて、いちいち傷つきすぎと思っていたが、ふと気がつくと自分自身がPeterになって、彼と一緒に悩み苦しみ、悲しみを分け合う形で劇が進んでいった。一幕の最後、Peterが泣きながら”Jason! Pick up the phone !!”ってと叫ぶシーンに、あまりに彼が切な過ぎて涙腺がゆるんでしまった。更に彼の唯一の家族の母親に自分がゲイである話をしようとした際、激しく拒絶されたりと、個人的にも色々と重なる部分があり、共感する部分が多かったのかもしれない。(ちなみに私はストレートです念のため)PeterJasonのアイコンタクトや細かい心の動きが辛いくらい伝わってきて、本当に切なくなることが多かった。特に二幕、Ivyと一夜を過ごしPeterを避けつづけていたJasonが、ロッカールームで声をかけてもつれない態度を取っていたPeterに、I miss you と言った時の彼の嬉しそうな顔がほんとに可愛くてこっちまで幸せな気分になってしまう。あと面白いのがPeterの夢の中が二度ほど出てくるのだけど、そこで二人で結婚式を挙げたり、天使に色々責められたり、結構どこにでも居そうな男の子的感覚が親しみやすく、感情移入しやすかったのかも。
特に気に入ったのがこのショーの主題となる曲、Bare。詩も切ないし、曲も切なくてじーんと胸に染み入った。Peterの詩ひとつひとつをMichael Ardenが大切に歌っていて、(しかも彼の歌い方はかなり聞き取りやすい)ますます心を打ってくる。


けれど最後はあまりに悲しい結末で、このような結果になることを予想していなかったこともあり、最後の卒業式のシーンは涙が止まらなくて終演後もしばらく泣きつづけた。大人たちが、彼らを深く傷つけしかも手を差し伸べてやらなかったことも悲しく、現実とはこういうものなのだろうかと思い知らされた。

running toghether forever you and I…
I have discovered one thing that’s real

ともかく演じている役者達の魅力に参った。主役のPeterMichel Ardenはまだ21才。こぼれる太陽のような笑顔が本当に素敵。舞台を降りてきた彼は、役そのままの優しい笑顔でびっくりした。その恋人役のJohn HillはクールなJason役をあくまで格好良く、強く、しかし最後普段強い分実はとてももろい部分があるということを上手く演じていた。横顔はまるでギリシャ彫刻のような端麗さ。他のキャストもエネルギーあふれる演技で、心の中が幸せで一杯になった。
曲はオルタナティブっぽいロックを中心で、しかもキーボードを作曲者本人が引いているという凄いバンドだったりする。

当日到着したらすでにチケットは売り切れ、もう駄目かと思ったけどどうしても諦められなかった私は、キャンセルを待つことに。そして運良く手に入れさらに学生チケットなんで20ドル。席はいいとはいえなかったけど、でも狭い劇場なんで充分…だよね。かなり疲労困憊で行ったので、2時間半きついかと思ったけどあっという間に過ぎてしまった。

実は行く前から滅茶苦茶期待して行っていたんだけど、まさに期待を裏切らない秀作。エモーショナルすぎるなんていわないで・・・私はこれ書いていても実は泣けちゃうくらい。こんなつたない文章なんで、今の私がどんなに素晴らしいと思っているか、とか、本当の感動が伝わらないと思われるけど間違いなくこれは人生の中での一本のうちにはいりました…。最近見てほんとに良かったって思えるものがあまりなかったので、待ってでも見る価値あったと思う。

これがリミテッドランで、もう月末に終わってしまうなんて…。もう一回見れないなんて、なんてついてないんだろうと思う。いつかまた(ぜひMichel Ardenで笑)Bareをやって欲しいなぁNYで。

BARE a pop opera

American Theatre of Actors
314 West 54th Street
Between Eighth and Ninth Avenues

2004/5/1 PM 2:00観賞